現在、東所沢のところざわサクラタウンで開催中の【大乙嫁語り展】


超絶技巧マンガ『乙嫁語り』の原画や生原稿が展示してあるこの天国空間、開催初日に訪れ、そのとんでもない画力のシャワーを浴びまくって、「すごい…」と語彙を失うような経験をしたのですが、なんと……

その後、超スペシャルイベント『森薫先生×入江亜季先生  対談トークショー』にも当選しまして、本日令和4年3月6日に行ってまいりましたぁああ!!

森薫先生と入江亜季先生という超絶技巧旅情くすぐりコンビの対談、背筋がシャンとなるような、とっても素敵な内容でしたので、備忘録として残させていただきます!!超走り書きメモ、自分でも解読できないとこもあるのが悔やまれます……
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私が当選したのは午後の部。

15時きっちりに、森先生と入江先生、そして担当編集の大場 渉さんが登場。
森先生は、「座って話すより立って話した方が話しやすい」と、ほぼ1時間スタンディング状態で貴重なお話をしてくださいました。


担当編集・大場さんからのご挨拶

  • 本当は2年前に原画展を企画していたけど、コロナで中止になった
  • 原画を見て、自分も描きたい、漫画家になりたい、という人が出て、次の世代に繋がるのではないかと企画
  • 生原稿を見て漫画家を志すのはすごく良いこと
  • ふたりともSNSをやっていないので、人柄が伝わる場があればと思って対談トークショーを企画した



自己紹介

<森先生>
  • 東京の駒込出身。駒込は当時は何も無く、絵を描くことくらいしかやることがなかった。駅前にマックができたのもずいぶん後のこと。
  • 出身校は水道橋駅前の工芸高校のインテリア建築科。デザイン科には漫画家さんもけっこういる。そこでパースの基礎を学んだ。
  • 代表作は『エマ』『乙嫁語り』『シャーリー』
  • 『シャーリー』は、高校の時に考えて描きはじめ、同人誌に。単行本1巻の冒頭は同人誌にもなっていたと思う。

<入江先生>
  • 香川県出身。漫画家になろうと思って上京。
  • そこからずっと東京で活動中。
  • 代表作は『群青学舎』『乱と灰色の世界』『北北西に曇と往け』
  • 森さんと同い年で、住んでいる所も近い。担当編集も同じ
  • 今日は森さんの話すことに相槌を打つのが仕事

<森先生>
  • 担当編集が同じだと、打ち合わせする場所に近いところに自ずと住むようになり、自然と家が近くなる。


ふたりの関係性

<森先生>
  • 入江さんとは日頃そんなに頻繁に会う訳ではないけど、週に2回、一緒に公園をウォーキングしている
<入江先生>
  • 犬の相手をしてもらったり。すごく犬を可愛がるのが森さんは上手い
<森先生>
  • 動物は大好きだけど、犬とかマンガがあるので飼えない。毎日1時間もお散歩とかしてあげられない
  • でも、ヤドカリとカタツムリとラットを四匹飼っている
  • ヤドカリはほとんど観葉植物みたいな感じ
<入江先生>
  • 森さんは、ずっと先をささってくださっている存在。描き込みなど、この辺までやらなきゃいけないんだなと教えてくれる存在。森さんがやってるから頑張ろうと思える。
  • 森さんとは、例えば同じ店が好きだけど、中のものを選ぶ時に、私はその店で一番シンプルなものを選ぶけど、森さんは一番ゴタゴタしたのを手にしている感じ。
  • 年下の漫画家さんはたくさんいるけど、森さんが一番頑張っている

※そういえば、森先生は美しい柄物のワンピース、入江先生はシンプルなスタイルで、トーク内容と重なってるのが面白かったです。

<森先生>
  • 若い作家さんにいろいろ相談されて答えるけど、それが一番反映されるのが、そばで聞いていた入江さん。その反応の良さがすごい。

コミックビームの頃のおふたり


<森先生>
  • 記憶があまりない。必死すぎて記憶が飛んでいる
  • ネットのおかげで資料の幅が広がった
  • 座卓で作業していたけど、腰がやばくてすぐ変えた
<入江先生>
  • エマの時、半年くらい森先生のアシスタントをしていた。


新人時代のエピソード

<森先生>
  • 何も考えていなかった。毎月の締め切りに必死で。
  • 今も昔も楽しいけど、当時はロデオみたいなのに必死に捕まって、振り落とされたら死ぬと思っていた
<入江先生>
  • こんなに力が無いのか、人に出せるものじゃないと毎月、泣きながら描いていた。
  • 自分より前にいるのが森さん。森さんは絶壁の上にいて、振り返ると編集が槍をもって迫ってくる感じ。
  • ギリギリだった。よく生き残ったなと。
<森先生>
  • ふたりは戦友みたいな感じ。でも、毎月楽しく描いてはいた。

マンガとはそもそも何なのか?

<森先生>
  • 娯楽。楽しんでもらうためのもの。精神的な栄養。
  • 現代は、肉体的な疲労より精神的な疲労の方が強い人が多いと思う。そんな疲れを明日に残さないための、元気になれるものが「娯楽」。
  • 国によって娯楽は違う。日本は割とマンガ好きな人が多い。
  • マンガは明日に響かない娯楽。お酒みたいに身体的な影響がない。
  • 入院中でも気軽に読めるし場所も選ばない。安いし、多岐にわたるジャンルがあるので好みによって選べる。
  • 娯楽は軽いものとして扱われることが多いけど…
  • 簡単に面白おかしくなってもらえるようにこれからも頑張ります。
  • マンガは芸術なのか?という議論もあるけど、マンガはサービス精神がある。楽しませるというサービス精神が。芸術は別に見る人をもてなさなくて良い。マンガはだから楽しい。
  • 基本的に、漫画家っていうのは田植えが出来ない人のための生きていくための手段。田植えをしてくれる人たちを元気づける。社会から外れた人のためのセーフティーネットかなと

漫画家に必要なことは?

<森先生>
  • もてなしの精神
  • でも、どんな仕事でもそうだとは思います
<入江先生>
  • 自分の外への興味。
  • 自分の中のことって大したことないので、世界や他人に興味を持って、見て、そうすると今これを描かねばならないというのが出てくると思う。
<森先生>
  • 喜ばれるのが好きな人に向いている。
  • 喜んでくれると私も嬉しい。
  • どうせなら一緒に楽しくやりたい

「もっとこうしたい」というところはある?

<森先生>
  • もっとこうしたいがありすぎる
  • 絵がもっと上手くなりたい
  • 頭の中ではもっと良いシーンだったのに、解像度が落ちてたりする。
  • 絵、上手くなりたい(2回も…!!)
<入江先生>
  • 森さんは、下手なところは見せないようにしてくれる。
  • 安心感がある。
  • 出来ることを増やしている。
<森先生>
  • 苦手なことを頑張るのは時間の無駄。苦手なことはあまり考えないようにしている。
<入江先生>
  • 現代物とか?

<森先生>
  • 現代は書く気にならない。ヤル気が半減する
<大場さん>
  • 森さんはそもそもスマホも持ってない
<森先生>
  • 小さいのは持っています!スマホはタクシーを呼ぶ機械。パソコンは本を読む機械。


マンガ家の新人にアドバイスすることは?

<入江先生>
  • 担当が同じなので、相談があると森さんのところに行く。
  • 森さんは、できる努力を教えてくれる。
  • 森さんの今は、ものすごくコツコツやられてたどり着いたもの。
  • 本人がやってきたから、周りにも「できるでしょ?」となる。
  • 森さんは、あらゆるイラストレーターの作品を見て目を肥やす努力を惜しまない。自分の好きな画集しか集めない人はいるけど、森さんはとりあえず買う。迷ってる暇はない。

<森先生>
  • 美術館は好き。
  • そのまま作品に反映されることはないけど、目を凝らして見たら何かになるのでは?と思って見る。

<大場さん>
  • 入江さんは実体験。森さんは図書館にこもる。
<森先生>
  • どこかに旅行に行くにしても、ある程度、その場所の歴史的知識を持ってから行きたい。文字でなんとかしたがるタイプ。
<入江先生>
  • だから後輩に教える時に言葉にできる。
<森先生>
  • 入江さんのアドバイスは中級者・上級者向けかもしれない。


何故『乙嫁語り』を描くに至ったか

<森先生>
  • 漫画を描く原動力は、興味があって好きであること。
  • 『エマ』から雰囲気変えたい気持ちはあった
  • 中央アジアは描きたかった
  • 月刊誌だとできなかったけど、隔月ならできると思った。けど、割とすぐに追い込まれた。
  • 中央アジアとか、アジア各国に興味があって、割と泥臭い地域が好き。1991年にソ連が崩壊してから中央アジアの情報が入るようになった。これはやれるかもと思った。
  • 『エマ』から『乙嫁語り』の切り替えは半年くらい。
  • 描き始めしばらくは、資料集めて取材。現地に行ったのは5〜6巻くらい進んでから。
  • グーグルマップには出てこないような地域。
  • 中央アジアの路地裏の雰囲気とかは、どこも似ていて共通性が高い。


何故アイスランド?

<入江先生>
  • もともとは地下の話を描きたかった
  • 前作がにぎやかだったので、やっぱり静かな話が好きだわとなった。
  • 地球科学の本を読んでいたら、アイスランドに出会って興味が湧いた。
  • アイスランドにするか、地下にするか考えたけど、今一番興味があること、考えていることをと思ってアイスランドにした。

<森先生>
  • 入江さん地下好きだよね
  • なにもない空間が好きって言ってた
  • 私はだだっぴろい空間は不安になる。
  • 中央アジアは何もなくて、そこに木でも生えててほしいとなるんだけど、でも描いているうちに愛着が湧いて地下が好きなのも分かるような気がしてきた。
  • 無意識に、自分が好きなものは皆も好きだと思いこんじゃう傾向にある。



ここまでは、事前に話し合って考えてきて下さったトーク内容だったのですが、ここからは参加者からの質問タイムに。



参加者からの質問 SNSはしないのですか?

<森先生>
  • 電話もメールもほとんどしないのでSNSは向いていないと思う

<入江先生>
  • 森先生はほとんどLINEの既読もつかないし返信も無い

<森先生>
  • 家に直接来てもらうのが一番はやい。

参加者からの質問◆‘江先生を連れて行くなら中央アジアのどの辺ですか?

<森先生>
  • カザフスタンの大草原だけど、入江さんは車酔いするから…
  • 旅行は入江先生の方が好きだから、どこでも楽しんでくれそう

<入江先生>
  • どこでも森さんを見ているだけで楽しいんじゃないかと思う


参加者からの質問 身体のメンテナンスで気を使っていることは?

<森先生>
  • できれば生きている限り描き続けたい
  • 80くらいまで長く持つように気をつけている。
  • 医療の発達がなんとかしてくれるとは思ってる。
  • できれば食事と睡眠だけでなんとかしたいんだけど、それじゃ駄目ということで、運動もしている
  • ウォーキング始めたし、筋トレも。1日のうち1時間くらいは運動するようにしている。
  • 身体を壊して描けなくなる人がだいぶ多いので、できるだけ身体を大事にしている。



参加者からの質問ぁ好きな楽器は?

<森先生>
  • 弦楽器

<入江先生>
  • ピアノ好き。
  • チェロを習っています。描くために。取材のために見に行って、これはやらないと分からないとはじめました。練習とか全然しないけどやっている。


参加者からの質問ァ,海譴魯ぅ韻燭福という描写はありますか?

<森先生>
  • 常に全力で振り切る感じでやっているけど、2話遡ると目につくところがある。

<入江先生>
  • ブランコのシーンとか好きだけどどう?

<森先生>
  • 頑張りましたが、改善点が見えてくる。今だったらもっと行ける、というのはある。悔いはないけど。
  • イケたなというか、頭の中で想像したものを雑念無く紙に定着できたな、というものはある。逆にとっちらかったなというものも。

参加者からの質問Α谷川ジロー先生からの影響は?


<森先生>
  • 原稿を見せてほしいと編集さん経由で頼んでもらった
  • そしたら少しだけアシスタントをすることになった
  • 生原稿を見ることは、ものすごく勉強になる
  • あの年齢、あのキャリアで純粋に描いていてすごかった。
  • 動物も好き
  • 高校の時に『「坊っちゃん」の時代』『父の暦』を読んでいた。
  • 一方的にファンなので交流ってほどのことはないけど、古本市には連れて行って頂いた
  • 亡くなってしまって、この先新しい作品が読めないのは、戦争で原稿が燃えてしまったようなkぃ持ち。あと10年は読みたかった。


参加者からの質問А〆能回は決めている? 


<森先生>
  • 連載は、開始するよりも終わる方が体力が必要
  • 続けている方が楽
  • 組みた立てたものを絞っていかないと終われない
  • 道筋は決めている

<入江先生>
  • 始まったものは終わる
  • 始めた時に終わりは決めている
  • 決めてはいるけど、そこに上手にたどり着けるか。
  • 落とし所は決まっている

<森先生>
  • 入江さんはいままだ物語を開いているところだもんね

参加者からの質問─お互いの作品で好きなキャラクターは?

<森先生>
  • 入江さんのことが好きだから全部好き。違う人が描いてたらそう思わないかも

<入江先生>
  • アミル好きだけど、アミルは森さんじゃんってなる
  • 物語は主人公が魅力的に描かれるものなので主人公は好き。
  • 物語を動かす人、スミスさんも好き。スミスさんも主人公。


参加者からの質問 現在連載中で注目している作品

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(↑展覧会にある森先生のコメント)

<森先生>
  • 割と最近の作品を(展覧会のホワイトボードに)挙げた
  • 現在連載中の作品ではちょっとすぐには出てこない
  • 『うちの小さな女中さん』は新刊出たらすぐ買いに行った


参加者からの質問 担当編集・大場さんの、おふたりへの印象は?


<大場さん>
  • 20年以上担当しているので…
  • 自分が27歳、ふたりが23歳の頃に出会って、当時は本当に新人って感じだったけど、実力が後からついてきて「良かった!良かった!」と思ってる。
  • もうちょっと上手くなってもらわないと。
  • この先10年くらいかけて、過去から今までマンガ業界が積み上げたものを2人が自分の中にも積み上げて、マンガ界の集大成的な作家になってほしい。


参加者からの質問 スランプはありますか?


<森先生>
  • ないです。(即答)
  • 絵は描ける。ネームでつまることはある。
  • 描くだけならいくらでも描ける。
  • 理想的なものが出せない、出力が悪いコピー機みたいになることはあるけど、スランプってことはない。
  • もっともっと描きたい

<入江先生>
  • 森さんは前、300まで生きたいって言ってた

<森先生>
  • 毎回楽しく描いている
  • 大変だけど、楽しい。
  • 描き出してしまえば描ける。


以上、1時間とは思えぬとっても濃密なトークショーでした…!!

資料を読み込む森先生、行動派の入江先生、真逆なアプローチのおふたりのお話は貴重なんてもんじゃなく、あの場にいれたことを改めて幸せに思います。

なんと言ってもびっくりしたのは、登壇されていた3人全員がもっともっと高みを目指していたこと…!素人から見ると、おふたりの絵は「え…?これ以上上達の余地があるんですか…!?」と戸惑うばかりなののに…!迷うこと無く上へ上へと突き進む姿に目がくらみそうになりました。

私はプロ野球も好きで、選手のことを「努力の天才」と思ってきたのですが、おふたりも「努力の天才」だった……

同世代のおふたりの仕事へのスタンス、リスペクトしかありません。襟を正しながら東所沢を後にしたのでした。最高でした!!


トークショーは終わりましたが、大乙嫁語り展は3月21日まで開催中!展示はなんと、全て撮影OKという太っ腹展示です。

生原稿の展示は、ネームと掲載原稿も合わせて展示してあり、何時間あっても時間が足りない濃密な内容でした。
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同じ施設内の本屋・ダヴィンチストアには、入江亜季先生のサインと原稿も展示!
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サイン会後にさらにサインも増えたようだし、平日限定のコラボメニューも食べたいし、複製原画の再販を狙ってまた行きたいと思います!(再販してくださいお願い!)